場づくりなら、自分でもできる

ホリノ:しかし、大学時代の初イベントで、助成金申請をやって、自前でも資金を集めて、100人規模の集客をした。イベントづくりに必要な要素が全部入っているじゃないですか。

 

桃生:そうですね、今思うとよくやったなと思います。実際は、いろいろ足りないところもあったと思いますが、まわりの大人が見守りつつ協力してくれて・・・。

 

キクチ:桃生さんがすごいなと思うのは、「自分は裏方に回って、友部さんを呼びたい」って考えたところですよね。学生の頃だと「自分自身が友部正人みたいになりたい」と考えると思うんだけど。これは、桃生さんならではじゃないかな。自分は学生時代に楽器をやっていたんだけど、周りは「自分がジミヘンになりたい」みたいなのばっかりでしたよ。

 

桃生:自分に自信がなかったんですよ。なにか飛び抜けて出来る特技もなく、目指しているものもなかった。でも、場を作るということは出来るんじゃないかと。

 

自分はステージに立てないけど、ステージに立ってもらいたいという人はいっぱいいたんです。それは友部さんみたいな有名な方だけじゃなくて、自分の友だちとかもね。そして実際にやってみて、舞台を作る人がいないと舞台に立てない人もいるなと気づいたんです。こういうことなら、自分にもできるな、と。

 

地域に出ていく面白さを知った「シネマ・ストリート・プロジェクト」

シネマストリートプロジェクトのTwitter twitter.com/csp_s
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ホリノ:「シネマ・ストリート・プロジェクト」っていうのも、学生時代にやってますよね。

 

桃生:盛岡に、「映画館通り」という通りがあるんですね。大通りにクロスした、今は本当に数えるほどですけど、昔は映画館がいっぱいあった通りです。その一帯を清掃活動しましょう、っていうプロジェクトなんですが、それに参加すると地域通貨がもらえる。そして、そのプロジェクトに共感してくれたお店で使える、というものです。通貨は「1C(シネマ)=1円」。使えるお店が、最大で30店舗ぐらい。で、お店側でも、たまった「C」を、お店を手伝ってくれた人たちに払うのに使ったりします。

 

地域通貨って、10年ぐらい前に全国で流行った時期があって、地域の中で人の循環を生み出そうという試みです。この地域通貨と清掃活動を組み合わせてやっていた人がいて、そこに私も参加したんです。

 

そうしたら、その代表が盛岡を離れることになってしまって、私が「代表代行」をやることになった。代表になるのは嫌で、代行という肩書にしていました。

3年生の冬から4年生の春にかけて、それがとても忙しくなって、きれいにした商店街でファッションショー、フリーマーケット、まちあるきなどいろんなイベントをやりました。

 

ホリノ:大学生も後半になると、就職活動とかしなきゃいけなかったんじゃないですか?

 

桃生:でも、しなかったですよ。

地域の大人たちといろいろやっている方が面白くなってしまって。

 

周りは就職が「決まった」「まだ決まってない」とかいう話題ばかり。その渦中にいると焦るし、もう就職活動は卒業してからやろうと。そう決めてしまった。今思うとふざけてたなぁと思うんですけど。それで大学卒業した後は、自分が生まれたところでスタートを切りなおそうと思って、仙台に戻ってきたんです。

 

ホリノ:そこから、今の仕事に就くことになったのは、どのように?

 

桃生:そこも人との出会いです。知り合いに紹介してもらって、入ったという。

 

「シネマ・ストリート・プロジェクト」って、地域に出て行って、いろんなたちと一緒にやる活動だったわけです。私たちがゴミ拾いしている時に、警察の人も自転車整理を一緒にやったり。ゴミ拾いのメンバーも、銀行員、映画作りをやっている人、美術で食っていくという人、自分でお店やっているという人。いろんな世代のいろんな大人に出会って、いろんな価値観があるんだっていうのが肌でわかった。

 

大学の中にいると、就職の話、バイトの話、彼氏彼女の話ばかり。でも、地域の人たちと付き合っていると、変な人がいて、いろいろびっくりすることがあるわけですよ。衝撃的な。で、もうそういうことの方がおもしろいなと。

 

そういう感覚で仙台に戻ってきたので、地域に出ていって、いろんな世代や価値観の人と会ってみたいという思いが強くて。よくカフェにいったり、人が集まるイベントに行ったりしていました。そのうち友だちも出来るようになって、その中から「桃生くん、就職決まってないんだったら、こんなところがあるよ」ってことで、紹介してもらった人が、加藤哲夫さんという人。せんだい・みやぎNPOセンターの代表理事だった人です。

 

ちょうど、多賀城市に新しい地域づくりの拠点施設が出来る時だったんですね。それが市民活動サポートセンターなんですが、多賀城市がその施設を管理運営する団体を公募していた。それをせんだい・みやぎNPOセンターが運営することになって、新しいスタッフが必要だと。

 

ホリノ:じゃあ、多賀城市市民活動サポートセンターには、立ち上げの時からいたんですね。それで、今はセンター長にまでなったんだ。

 

桃生:そうですね。でもまだ働きはじめて6年目くらいですけどね。

 

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